レヴュースタァライト最終回感想 オタクは美少女剣闘士奴隷の夢を見るか

「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」最終話、面白かったですね。分かります。

こう、良くも悪くも、期待通りというか予想通りというか、まぁ最終回に日常描写は必要だよね分かりますとか、物語の入れ子構造に従えばひかりちゃんが囚われているのはレヴュースタァライトの一人芝居だよね分かりますとか、飛び入りのカットはリフレイン演出だよね分かりますとか、別の結末がありえたかもしれない!再生産!だよね分かりますとか、最後は第100回聖翔祭だよね分かりますとか。

 

ブログで「いよいよ最終回!解釈せよ!あなたなりの結末をお持ちなさい!」とか言っておいて劇場版商法されたらどうしようかと正直気が気ではなかったんですが、本当に綺麗にシメてくれて良かった。素晴らしいアニメをありがとう。

revuestar.hatenadiary.jp

でねでねでね。そんなワケで本筋というか、理性的な感想とか評論については最終回前に言いたいことだいたい言っちゃったんですが。

 

 

 

キリン、ヤバくないっすか?

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こっち向いてきたあたりまでは、まぁ予想の範囲内。「観客がいなければ舞台は成り立たない、観客は私(キリン)と……アナタ(視聴者)!w」くらいの意地の悪さは、「やっぱりこの物語を観るもの演じるものの構図にはテレビの前の視聴者も含まれてるよね~」程度に考察のアンサーを貰ったつもりでいました。


で、こっからは完全に自分語りです。こっから先「オタク」とか「アニメ」とかいう単語が出てきたら、オタクっていうのは僕のことで、アニメっていうのは僕が見てきたアニメという意味だと思ってください。そういう自分語りが、僕にとってのレヴュースタァライトのキリンを語るために必要だったので仕方ないです。

もうちょっと理性的なものを書くつもりだったけど、ダメでした。レヴュースタァライトはそれほどに僕のアニメ観、オタク観を『再生産』するものでした。

 

さて、そもそも僕はレヴュースタァライト舞-HiMEの文脈だ!って思って見始めたんですね。同じ古里Pが関わってるし。

舞-HiME舞-乙HiMEも、可愛い女の子いっぱい集めて、競い合い、奪い合いましょう!ってやらせるタイプのアニメじゃないですか。その直後のゼノグラシアや宇宙かけはバトルロワイヤル要素をメインテーマに据えてる感じじゃないですけど。最近の古里作品だとクロスアンジュなんかも近いですね。

というか最近はまどか☆マギカが流行して*1雨後のタケノコのようにそのテのアニメがあるので馴染みのある方は多いでしょうし、その流れでレヴュースタァライトを見た人も多いでしょう。ぼくは最近だと「結城友奈は勇者である(1期)」が好きです。

 

この辺を僕は勝手に「美少女剣闘士モノ」と呼んでいます。

その心はというと、だいたいそのテの話って美少女同士を戦わせたがる黒幕がいるじゃないですか。それが剣闘士奴隷っぽいなと。舞-HiMEだと黒曜の君だし、乙はナギ・ダイ・アルタイ*2クロスアンジュエンブリヲ。ゆゆゆは大赦とか神樹様とか。まどマギはみんな大好きキュゥべえ

ただ、本当に女の子戦わせて喜んでるだけのサイコパスだったら敵役にしたってクソ野郎すぎる*3という理由なのか、だいたいコイツらは世界の秩序のためとか、人類の繁栄のためとか、宇宙の安定のためとか、大義名分を持っていることが多い。

これは要は男性的権威なんですね。俺は理性的に世界のためを思ってやってやってるんだぞと。そこで犠牲になるのは当然女だろと。そういう古き悪しき男性権威なんです。

なんだけど、だいたいコイツらは大体女の子達の友情パワーとかでやられちゃうワケです。女の子は純粋無垢で残酷なのでそういう古臭い男性的秩序なんか知るもんかとブチ壊してくるワケです。

アレッ、なんでそういう話が男性オタクにウケるのか分からない?分かります。

実はそもそもオタクは男性性としてノンノンな人類の脱落者なので、主催者側の男性的権威による大義名分を守りたいワケではないんですよ。世界の平和と繁栄のためにキモいオタクは要らないんで。

でも女の子は虐げたい。当たり前ですよね。10年とか20年とか自分を無視して嗤ってきた属性が憎くないワケないじゃないですか。

だから男性的権威を笠に着て女の子を散々痛めつけるワケです。でも男性的権威が支配する世の中も嫌いなので少女に壊してもらうワケです。自分勝手で最低な存在ですね。

 

女の子同士を戦わせて楽しんでるのはアニメの中の黒幕も、モニターの前の自分も同じはずなのに、「いや、いうて俺はコイツとは違うから」とか心の底では思ってるダセー奴なんです。

 

でね、それでね、それでも僕はこういう自分のヤなところに自覚的だったつもりだったんです。まどマギが流行って「QB許さねぇ!56す!」みたいなのが盛り上がったじゃないですか。それは最高にダセーなと。「いうてお前らがそういう話を好んで見てるからこういうアニメが作られてるワケやしキュゥべえは必要悪として設定されてんねんぞw」とかヒヤヤカに嘲笑ってました。

美少女剣闘士モノでベストを選べと言われれば、「世界秩序のために不自由する女の子」をポジティブに内面化する舞-乙HiMEを選んでいたのも、『分かってる』つもりだったからなんです。*4

その一方で、「少女は体制の破壊者でなければならない!」とか言いつつ、黒幕側がやられる展開が当然だと思っていたんです。

そういうわけで(ようやくレヴュースタァライトの話に戻れたぞ!)、あのキリンはきっと最後に「分からない!」って言うと思ってたんです。だってレヴュースタァライト舞-HiME文脈の作品でアイツは黒曜の君とかの後継なはずですから。キリンなんかの思い通りに舞台少女がなるわけねーんだよ、とか思ってたんです。

で、アイツはなんつった?思い出してみましょう。

 

舞台少女による化学反応!予想もつかない舞台!

ああぁぁぁ………!!

これこそ!!私が見たかった舞台!!!!

分かります!!!!!!!!!!

 

分かりますか。

内心見下してた奴が、自分の心の奮えと全く同じテンションで、自分の本心を絶叫したときの気持ちが。

完全に裸の王様の気分ですよ。

エラソーに「少女は体制の(ry」とかほざいてましたが、そうじゃなきゃカッコがつかないからなんですよね。女の子を虐げて遊んだ手前、自分の性別側の大義名分もちょっと傷つけておかないとカッコがつかないからなんです。 

 

それをキリンは開き直って絶叫しやがったワケです!俺の本心を!!

 

アニメは総合芸術なんですよね。絵だけでも、音だけでも成り立たない。紡がれた物語で最高に昂ぶった自分の心と、声優の演技のテンションが一致して、ズバリ自分の本心を言い当てられてしまえば、否が応でも認めざるを得ないワケです。「いやこれは美少女に置き換わった剣闘士奴隷だよねw」とか余裕ぶっこいてる場合じゃなくなるワケです。

 

本当に参りました。最高です。レヴュースタァライト

 

 

で、これは最終話から二日経って、いろんな人の話を見ててなるほどと思った話なんですが、レヴュースタァライトって、最終的に女の子が誰も不幸にはなってないんですよね。バトルロワイヤルものなのに。

 

そんで、もう一つの事実に気づくわけです。

レヴュースタァライトの少女たちは、誰一人レヴューの仕組みや由来を疑問に思っていない。少なくとも、敵対視はしていない。

2話の時点では華恋ちゃんが「アレ何?!」って聞いて回ったりするけど、それ以降は誰も気にしてない。ひかりちゃんがやたら自己犠牲精神爆発させてるだけで、他の子たちは脱落したなら脱落したなりに身を処している。

全てはミスリード。そうです。

 

実は最初からレヴュースタァライトに、美少女剣闘士モノに見られる男性的権威と女性的破戒の対立構造なんてなかったんですよ!*5

 

思い返してみれば全ては序盤で描写されてるんです。

華恋はあくまで飛び入り参加。キリンに「お引取りください」とまで言われてる。

華恋は倒した純那ちゃんをしっかりと抱きかかえている。「脱落」させるつもりはない。

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そして純那ちゃんのスローガンは「掴んでみせます『自分星』」!

ラストだって、「『キラめき』は奪われたって再生産できる!」と立ち直るだけで、客席で絶叫してるキリンはガン無視。*6

 

 

そう、誰から求められるわけでない。

少女は自らにとってのキラめきを求めているだけ!!それだけで尊い!美しい!

 

我々オタクのフニャチンの表象みたいなヤラレ役の男はいらないんですよ!見てるかフェニミニスト!見てるか「百合に男が挟まるとか邪道!!(キリキリキリキリッッッッッッ)」とか言ってるオタク!!!!!!お前も!!俺も!!!!!!置いていかれてるんだよ!!!!!!!!レビュースタァライトに!!!!!!!!!!!!!!!!!

そう!2018年にして、美少女剣闘士モノは男性の目線も価値観も!気にしなくなったのです!!

分かります!!!!!!



レヴュースタァライトは美少女剣闘士モノの醜さをあまねく暴くと共に、「そもそもお前らのことなんか少女は気にしてないぞ」と突き放しつつ、誰も傷つけず生きる場所を与えてくれた作品なんです!!

分かります!!!!!!

 

 

 

 

 

ここまでお読みになった皆さんなら、もうお分かりでしょう。

少女同士が宿敵になる美少女剣闘士モノの系譜である「ビビッドレッド・オペレーション」で、ラスボスは女声のカラスで、彼女の野望は既存秩序を破壊して次元の支配者になることでした。

5年前にビビオペは男女の対立軸を克服していて、レヴュースタァライトを超えていたんですね。

ちゃんちゃん。

 

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     \.             ノレ'/         d⌒) ./| _ノ  __ノ

 

*1:7~8年前のアニメを最近とか言うのは老いた証拠だぞ

*2:いや舞乙はそもそもオトメシステムが世界の平和を保っていて、オトメってそういうイケニエみたいなのでいいの?っていうことをアリカ自身が問いかけて乗り越えていく話でしょというご意見もあろうが、そんなマジなご意見を言いたくなっちゃうお前みたいなキモオタは黙って僕と飲みましょう。語り明かしましょう。

*3:エンブリヲなんかは割とそうだった気がするけど

*4:最後まで考察してみて、舞-乙HiMEのポテンシャルの高さを再認識したとも言う

*5:お前が勝手にそういうのがあると思ってただけ?分かります。

*6:これすき

https://twitter.com/tatuya031200/status/1045714167582228480